「琵琶湖の水を止める」

あの大人気映画「翔んで埼玉」の舞台は関西へ。大阪が天下をとるのを阻止しようと麻実 麗が決断!
その苦渋は「琵琶湖と洗堰」を知ればナットク!

Chapter 1 「琵琶湖の水を止める」とは?

日本最大の湖である滋賀県の琵琶湖。
その貯水量は275億トンでこれも日本一です。

琵琶湖を囲むように連なる山々から琵琶湖に水が流れ込みます。その河川の数は一級河川117本を含む450本。流入水量は年間58.9億トンに及びます。そのうち湖面蒸発するのが4億トン、琵琶湖疏水を通じて京都へ流出するのが4.9億トン。残りの48.4億トンがたった一つだけの淀川水系の「瀬田川」によって流出します。途中宇治川を通り、木津川、桂川と合流し、淀川となって大阪湾へ注いでいきます。琵琶湖は、洪水時には下流の洪水防御のための調整池としての役割を、渇水時には貯水池の役割を果たし、京阪神に住む人々にとって極めて重要な水源となっています。

「びわ湖の水止めたろか」

長い歴史の中で治水や水利で対立してきた京都や大阪への対抗心から出る捨て台詞なのです。なにより水を止めることで自分たちの街(滋賀県のほとんどのエリア)を水没させてしまうという捨て身(自虐性)を多く含んだセリフなのです。

河川図

Chapter 2 「琵琶湖の水を止める」方法

「琵琶湖の水を止める」方法

前述のとおり、洪水時に下流の洪水防御のために瀬田川からの流出量はコントロールすることが可能です。その役割を担っているのが「瀬田川洗堰」です。
明治18年、22年、29年と連続して起こった淀川の堤防決壊をきっかけに、明治33年から41年にかけて行なわれた淀川改良工事で、明治38年に完成したのが最初の堰である「南郷洗堰」です。当時としては全国最大規模の幅172.7mもある32門の堰でした。この門の開閉はウィンチを使って人力で行っていたため大変な労力を必要とし、全閉には2日、全開には丸1日かかりました。
昭和36年に、「南郷洗堰」の下流100mの場所に新たな堰「瀬田川洗堰」が完成しました。この堰では電動による遠隔自動制御が可能な門が設置され、今も瀬田川からの放出量のコントロールを行っています。この放出量を調整する「瀬田川洗堰」は国(国土交通省近畿地方整備局琵琶湖河川事務所)が管理をしています。
実際に琵琶湖の水を止めた場合、淀川の水量が3分の1まで減って下流域の水供給に多大なる影響をもたらす一方で、約14800ヘクタールが浸水した明治29年の琵琶湖洪水水害に匹敵するような深刻な被害が出ると考えられ、現在国の方針によって全閉操作(琵琶湖の水を完全に止めること)は原則行わないことになっています(原則として「琵琶湖の水は止められない」ということになります。実際は1961年(昭和36年)以降、5回全閉したことがあるのですが、ここでは割愛します)。

琵琶湖の水害地図
旧 南郷洗堰

Chapter 3 琵琶湖の治水の歴史はここで学べる

アクア琵琶

https://www.kkr.mlit.go.jp/biwako/aquabiwa/index.html

瀬田川を中心とした琵琶湖の治水の仕組みと歴史について紹介している施設があります。「瀬田川洗堰」のすぐ横にある「水のめぐみ館 アクア琵琶」。模型や映像などで学べる学習施設で、子どもはもちろん大人でも深く理解することができます。

琵琶湖博物館

https://www.biwahaku.jp/

「湖と人間」をテーマに、琵琶湖の生い立ち・人と生き物との関わりについて楽しみながら学べる「体験型」博物館です。淡水の生き物の展示としては日本最大級の水族展示や西日本ではここでしか見られない大人気のバイカルアザラシは必見です。2020年10月にリニュアルしグランドオープン。A展示室では世界でも珍しい「半身半骨」のツダンスキーゾウ標本や、B展示室では、AR(拡張現実)技術によりタブレット上で琵琶湖に浮かぶ丸子船の映像を体験できるコーナーなど見どころが満載です。このほかブラックバス料理が味わえるレストラン、オリジナルグッズを数多く揃えたミュージアムショップもあります。